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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「急ぐと暑くなるもんじゃ」
「少し、歩こうか」
「では、俺だけ、走る」
二人は、喘ぎながら、急いでいたが、一人が、走るのを止めて
「誰か、来よる」
と、呟いた。二人の行く先に、提灯の火が見えていた。道は、一筋だけであった。
「灯が、動かん」
大久保は、こういって
(もしかしたなら、お由羅派の細作共ではないかしら)
と、思ったが、西郷吉之助は、返事もしないで、前方を急いでいた。大久保は、すぐ、走って追いついた。
「和田の家の前じゃ」
大久保は、こういって
「廻り道をしようか」
「俺はせん。何が怖い?」
灯は、横目付、和田八之進の邸の前で、八之進は、由羅派の人であった。その灯の中に、二人の人影が、動いていた。そして、二人の足音が近づくと、提灯が上ったし、二人の侍が、こっちを、じっと眺めていた。
「見張じゃ、西郷」
「うん」
と、いった時、邸の軒下に、まだ人がいたらしく、道の真中へ、三人の影が立って
「止まれ」
と、叫んだ。そして、三人の方から、近づいて来た。
「面倒らしいぞ」
大久保が、こういった時、提灯の灯で、二人を照らしながら
「何処へ行く」
と、咎めた。大久保が
「貴公達何んじゃ」