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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「そうさ。かぼちゃ、とうなす、いろいろあれど、主に見返す奴は無いってね」

富士春は、浴衣の襟を、くつろげて、片立膝から、水色をのぞかせながら

「今夜も、厭に蒸すねえ」

五人の前に、肴の皿と、徳利とが置いてあった。

「毛唐は、男と女と、人の前でも口を吸うというが、本当かの」

「そういう犬のような真似を致す奴輩ゆえ、捨てておけんと申すのじゃ」

「好いた仲なら、嘗めもしようさ」

「ははあ、師匠も、嘗めるか」

「当り前さ」

「何うして、嘗めるか、後学のために、拝見致したいものだの」

一人が、肱を張って、富士春の顔を見た。

「何をつまらぬことを申している」

「いや、男女のことは、造化の大道で、攘夷と共に、神州男子の心得ておらねばならぬことじゃ」

「貴島さん」

富士春は、一人の齢の若い浪人に

「こうしてさ」

と、云って、手を延して、貴島の手を、引っ張った。

「何をなされる」

「いいじゃないか――何んとか云ったね。どうかのだいど?」

「造化の大道」

「それそれ、造化の大道ってばさ、こっちお向きよ」

「師匠は、酔うといかん」

貴島は、手を振り放して

「仮令、斉彬なりと雖も、又、益満の命なりとも、開国説をとるなら、わしは、反対じゃ――」