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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「妾の命でも、反対か」

富士春は、膝を崩して、又、手を取ろうとした。

「拙者と、嘗めよう、お春殿」

と、褌一つのが云った。富士春は、じろっと見て

「もう少し、鼻を高くしておいで」

一人が

「師匠、淫らなっ――益満の留守に」

と、叱った。

「おやっ――」

「酔うといかん」

「妾が?――酔うている?――い、いつ酔うた?――妾が、間男でもしたというのかい?――したって何んだい、間男ぐらい」

「斉彬の真意は判らぬが、薩州の急進党は、攘夷を以て、討幕を口実にしようとしているが、幕府を討つ口実としては、開国は、違勅であるという、この一本槍で――」

「何が、一本槍だい。二本差っ、大の男のくせに、あっちいくっついたり、こっちいくっついたり、昨日まで、公方様の家来であったくせに、今日は寝返りを打ったり、憚りながら、富士春は、意地ってことを、知ってるよ――いい加減なことを云って、休之助め、京女郎と、ふやけくさって、間男が、何んだい――手前勝手な」

浪人達は、初めて見た富士春の酔態に、持て余しながら

「師匠、先に寝たら、何うじゃ」

「人のことを、かまう柄かい。居候浪人」

「何?」

一人が、睨みつけた。