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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「三角の、鈞召金剛炉は、何を祈る時に用いるものか。それを知っていて、山を貸すことは、出来んのう」
「何っ」
一人が、一足踏み出した。
「山内っ」
牧が、叱った。そして
「御尤も」
と、頷いた。
「然し、呪咀も、時により、事により、人によって――」
「いや、いやいや――」
義観は、首を振って
「斉興が当主ゆえ、その方の命にて、斉彬を呪ったとして、斉彬が当主となりゃ、これ、主殺しに当る――」
「人事の推移の如き末の末でござる。われらは、兵道の威法を示して、天下にこの法有るを知らしむれば足りる」
「物の顕現は内発による。強いて現そうとして、現す者は、常に邪道に陥る」
義観は、牧を見上げて、その眼を、じっと、睨みつけていた。
「この山は、貴様のものか」
と、山内が、怒鳴った。
「ああ、わしのものじゃ」
「何処に、貴様のものじゃという証拠があるか」
「わしのものでない、という証拠が、何処ぞにあるか?」
「何?」
「出してみい」
牧が
「山内っ」
と、又、叱った。そして、
「以前、この頂上にての修法が、乱暴者のために妨げられましたが、それをそのまま棄ておくことは、兵道家として、天に対して、恐れあり、枉げて、三五夜頂上を許して頂きとうござるが――」