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めいじせそうひゃくわ
明治世相百話
山本 笑月
Read 明治世相百話 (めいじせそうひゃくわ) by 山本 笑月 (やまもとしょうげつ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 128,862 characters · 251 screens
自転車もなく、たまに年始客の人力車が通るくらい、どこの往来も娘や若衆の追羽子、子供の凧揚げで一杯、これらは江戸時代そのままの風景。九一や藤一の太神楽が、おなじみの店先でまくら太鼓の音賑やかにまりの一曲、そのほか三河万歳や町内の獅子、編笠姿の鳥追女など、正月らしい交響楽に太平気分を味わった。その後追い追い山高帽子や洋服の礼者も殖え、足取りも大分せわしく、二十五、六年代には電信電話の線もゆきわたり、交通も繁しくなって、追羽子や凧揚げは横町か空地に限られ、娘子供は大不服。
腕白連は誰しも浮身をやつした凧遊び、市中にも凧屋はたくさん、章魚が鉢巻をした姿の看板が目についた。一枚、二枚の小凧から二枚半以上は巻骨障子骨の上等品、奴凧、トンビ凧、蝙蝠凧、剣凧の類、字凧は竜、鷲、魚、蘭の字など、絵凧は達磨、二見ヶ浦、日の出に鶴、乃至は人物の一人立、二人立、牛若、金太郎、頼光、凄いのは猪ノ熊や大入道、熊坂長範、いずれも蝋引きの眼玉が光る。あるいは童子格子、三筋に蝙蝠などが通り物。
ウナリは鯨か籐で、大凧のウナリは左右へ突き出たカンザシ、長糸目で木舞縄の尾を十分につけた威勢のよさ、あれは誰々の凧だと評判、大小いりまじりに揚った中を、ホリ竜という二枚張りの字凧、ガン木を二、三挺もつけて喧嘩仕かけに相手の凧を切って飛ばす暴れもの