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めいじせそうひゃくわ
明治世相百話
山本 笑月
Read 明治世相百話 (めいじせそうひゃくわ) by 山本 笑月 (やまもとしょうげつ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 128,862 characters · 251 screens
木場に残った江戸風景
が昇天したという崖崩れの跡も、その頃すでに雑木の林、山の中央にただ一本孤立したのが「争いの杉」という問題の名木、あとは一面の麦畑で盛んに囀る雲雀の声、この辺は風流向きの名勝。
日暮里側へ山を下りると、音無川に沿うて根岸から王子への一筋道、これが本当の田舎道で、右方は際限のない田圃の遠見。道の片側に、一、二軒ずつの茅葺き屋根、中には噴出しの井戸もあって御休処の小旗、埃まみれの汗を拭って井水に浸したトコロテンの一啜り、なんともいえぬ味があった。
川では子供らがめいめい畑から持って来た白瓜をかじりながら泳いでいる。今日のあの辺では夢にも見られぬ田舎風景。
木場に残った江戸風景
今はそれも夢の跡
深川木場は今でも材木の本場、鉄筋コンクリートにけおされて昔のような景気はないが、板割を扱うハガラ屋、カク材を主とする角問屋とあってこの角屋に出入りする川並という人夫、竹の長カギ一本で大きな材木の上げ下ろし、ヤレエンヤラヤーと声を揃えて堀の中で働く姿は最後に残った江戸風景。
材木堀や川筋に到着した大角小角を、サンドリに積んだり、筏に組んだり、長鉤一本で自由自在、客があれば番頭と一緒に堀へ行って、目当ての材木を引き出し、たった一本の上へ乗って足でその角材をぐるぐる回して見せる。