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めいじせそうひゃくわ
明治世相百話
山本 笑月
Read 明治世相百話 (めいじせそうひゃくわ) by 山本 笑月 (やまもとしょうげつ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 128,862 characters · 251 screens
デン界の名物競べ
狂言は十八番の呼び物「大発明」の通し、更生の意気で一座大車輪の上、例の黒幕喜楽の女将が必死の運動、さすがに芳町新橋はじめ花柳界の連中が毎日華々しく車を列ねて乗り込む騒ぎ、茶屋も出方も大まごまご、久し振りの賑わいと今までにない綺麗ぞろいの総見に、土地ッ子も驚きの眼を見張った。
東西の桟敷は右の連中、土間も高もがらり変った上等の客種は、この小屋初めての珍風景、麦畑も菜の花もけし飛んで案外の上景気、にも拘らず下町育ちの伊井は島流しにでも遭ったような浮かぬ顔。「なにしろ下町の小屋は八方塞がり、よんどころなく当座へ来ましたが、場所は遠し、道は悪し、お客様へ気の毒です。いや全く風流過ぎますよ」と一遍で参ったらしい。
デン界の名物競べ
播磨の毛剃と新呂の吃又
義太夫華やかなりし明治の中頃、綾瀬についで大看板の播磨太夫、赭ら顔の堂々たる体格、本場仕込みの芸ではないが生来の美音で声量たっぷり、わざと禁物の天ぷらを存分に食って高座へ上ったという。「十種香」や「御殿」で鳴らした外に、十八番は「毛剃」の柳町か元船、確かに明治デン界の名物。
団十郎と違った味で「毛剃」の九州弁はこの人独得の至芸、訛り工合から音声の扱い、太い調子、全く堂に入って聴衆を魅了した。