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めいじせそうひゃくわ
明治世相百話
山本 笑月
Read 明治世相百話 (めいじせそうひゃくわ) by 山本 笑月 (やまもとしょうげつ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 128,862 characters · 251 screens
明治時代には煉瓦の銀座でも暖簾の店が多く、日本橋通りや大伝馬町、堀留あたりの大店始め、市中の商店は紺の暖簾に老舗を誇った。
紺木綿に白抜きの屋号、中央にはヤマ一とかカネ三とかの店印し、朝晩小僧さんが六尺柄の暖簾掛けでかけはずし、これも一つの商店気分で、町内一列、同時にやはり紺木綿へ屋号染抜きの日除けを店先へ張る。総じて暖簾の文字は古風の名筆を貴んだが、中には菓子屋、筆墨店など、白の帆木綿へ当時書道の大家に、何々堂などと墨書の名筆を揮わす。専売以前の煙草屋は赤味がかった茶色木綿で、これだけは一見その商売が明瞭、だが今日はもうない。
長暖簾は割烹店、すし屋、そば屋その他の飲食店、あるいは男女雇人口入れの慶庵ぐらい、もっとも真田の縁を取った慶庵の暖簾などはあまりくぐり栄えのせぬ野暮な代物、転じて暖簾の屋号を見ると、大抵は先祖出身の国々、江戸名物の伊勢屋稲荷に犬の屎、その伊勢屋を筆頭に、近江屋、駿河屋、三河屋、相模屋、越前屋などはどこの町内にも見受けたくらい、東海道、東山道は大概揃っていたが、今はそれらも本名の何々商店と改まって、暖簾の数も減ったわけ。
暖簾が古いといえば老舗の自慢だが、実際の暖簾は一年ごとに染め替えて、正月には皆新しく紺の香を漂わす。