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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
それはお夏よりは一つ二つ上の二十歳そこそことも見られる、色の浅黒い、確りした男で。何んとなく手答えのある、確とした感じを与えます。
「お嬢さん――何んかわけがありそうですね、差支がなかったら、話して下さい」
「ハイ」
お夏は少したじろぎましたが、悪びれた色もなく平次に従って、納戸の隣の長四畳に入りました。八五郎は心得て、その入口を見張ったことは言うまでもありません。
「ここなら大丈夫でしょう。さア、聴きましょう、お嬢さん」
許嫁の菊次郎の死骸が、まだ葬りもせずに隣の部屋にあるのに、弟の徳三郎と、泣いたり笑ったりしているのは、確りものらしいお夏の熊度としては、いかにも腑に落ちないものがあるのです。
「御尤もですが、これには深いわけがあります」
「――――」
お夏は端麗な顔を挙げました。まだ頬が上気して、睫が濡れております。
「私と徳三郎さんは、五年前から幼な馴染でございました。私がこの家に引取られる前からでございます。この家に引取られて兄の菊次郎さんよりは、弟の徳三郎さんと、私は親しくしておりました。菊次郎さんは遊び好きで、私などを相手にしてもくれません」
「――――」