Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Read 私本太平記(三) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 222,108 characters · 446 screens

Aozora Bunko

「いや、その高氏なら、密勅の呼びかけもしていません。もちろん、連判にもみえぬ」

「赤橋殿の妹聟。いわば北条一族と見てのことですか」

「それもあるし、高氏は寝反りなどは出来ぬ一徹者、うかつに呼びかけるのは、あぶないとみな申す」

「では、東国において、勅におこたえした者は、大族では一名もなかったのですか」

「皆無ではない」

「では、たれですか。東国での隠れた宮方といえば」

「新田小太郎義貞がある」

「や、あの新田も」

「笠置には、起ちおくれたが、いつかは、きっと東国の野に起って、宮方の中心になるであろう。……したが、新田、足利は下野の領地を隣り合わせていることゆえ、なにせい、至極むずかしい立場にある」

いつか、屋根の夜雨の音は、やんでいた。

北畠具行は、囚われの境遇も、忘れはてていたようだった。酒につよい道誉に彼もつりこまれて、更けてまで、なお、杯をおかなかった。

「……ああ、死にとうない!」

とつぜん、彼は酒気にまぜて、嘆息した。

「きっと、天下はわれらに恵んで来るのだ。いま言ったような面々が、こぞり起つ日は決して遠い先ではない。こんなにも、下地は春を待っているのに、それも見ず、それに先だって、この世を散って去る身とは……ああ何とも、ざんねんだなあ、死にたくないぞよ、道誉」