Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Read 私本太平記(三) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 222,108 characters · 446 screens

Aozora Bunko

いずれにせよ北条幕府としては、こんどこそ一挙に積年のわずらいを除いて、新たに持明院派からべつな天皇を立て、その統治を一新するに今を絶好な機会としたにちがいない。

だから鎌倉の主脳と武将は、続々として、ここ関東から上方へのぼっている。

九月 十四日  二階堂出羽守、秋田城ノ介、着京。

十六日  金沢貞冬、宇治ニ着。

十八日  大仏貞直、入京。

二十一日  長崎四郎左衛門ホカ諸将、前線ニ続ク。

二十四日  足利高氏、笠置ヘ向フ。

これらは、主軍というもので、ほかにも幕令をうけた畿内五ヵ国の兵や、東海、山陽、山陰の兵などが、おくれ走せにも参加したのはいうまでもない。

中でも、足利高氏の着陣は、遅かった。――もっとも、それには理由があった。

彼にたいして、出陣令がくだったのは、九月五日であったが、折わるく、彼の父、足利貞氏は多年の病が重って危篤に瀕していたのである。

しかも、一方には、

「即刻、出陣せよ」

とある幕令を手にし、途方にくれたその夜に、父貞氏は亡きかずに入ったのだった。

だから彼は、出陣支度の忙しない間に、からくも子としての死に水を取っただけで、あとの葬儀万端さえ見ることが出来ずに軍旅へ急いだのである。