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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

入れ替ってお新が入って来たのを、下手人は色白の裸の後ろ姿を見て、お才と間違えたんだ」

「下手人はどこに居たんで――」

「隣の職人がお茶を呑んでいる間に、あの足場に登ったんだよ。油障子を開けると、ちょうど未刻半頃の陽が流しへ落ちた。それをお神は三畳から見たんだ、――お新へ陽が当った――と言ったのを、皆んな聞き逃しているんだ」

「なアる」

「竹は油障子を開けて、女が石榴口から入るところを、拳下がりに短刀を飛ばし、女が浴槽に落込むのを見定めて油障子を締め、悠々と降りた。人間はつまらないが、竹の野郎腕は大したものだ。あの天窓の敷居には、障子を開けた跡がはっきり付いていたよ」

「ヘエ――」

「それから、知らん顔をして、丁子風呂の表から入り、着物を脱いで、裸一つで女湯に駆けつけた。ここがあの野郎の太いところさ」

「…………」

「刺されたのが覘ったお才でなくて、どんなに驚いたろう。がそのうちにお才が下手人の疑いで引かれ、運がよければお才を処刑に上げる積りで眺めていたが、昨夜許されて帰って来るのを見て途中から誘いかけて、牛ヶ淵へ突き落したのさ」

「御家人の竹は、なんだってお才を殺す気になったでしょう、お才は竹を知らないって言っているのに――」