Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

「熱心もいいが、お茶を淹れるのを忘れては困るな、俺は喉でも濡らして来る」

佐々村佐次郎は町人風なぞんざいな口を利いて、そそくさと肌を入れると、苦笑を残して立ち上がりました。

十月といっても、半日陽に照りつけられると、全く楽ではありません。

それからまたしばらく――。

「若旦那、お茶でも淹れさせましょうか。当る当らないと言っても、およそ程合いのあるもので、――今日はまるで的の方が逃げているようですぜ」

茂七はおどけた顔をしました。主人にこんな事を言いながら、少しも怒らせないような、滑らかな調子があります。

「無礼なことを言うな、茂七、――お前が見ているから当らないんだ。向うを向いているがいい。一本で金的を射止めるから」

「ヘエ」

「お前の顔を見ると、大概の的は逃げ出すよ。後ろ向きになってごらん」

「矢を持って駆けて行って、的へ突っ立てるんじゃないでしょうね、若旦那」」

「馬鹿にしてはいけない。私は本当に怒るよ」

「ヘエヘエこんな工合に?」

茂七は神妙に後ろ向きになりました。

「顔もそっちへ向けるんだよ。眼の隅から、チラチラ見たりしちゃいけない」

「ヘエ――驚きましたネ、――的の方が飛んで来て、食い付きゃしませんか」