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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
明日からは乞食にでもなる外はありません」
「まア、そんなに力を落したものじゃない。町内でも、親類方でも、まさか捨てておくはずもないから」
「有難うございます。が親分さん、これが仲間や他人なら、痩我慢も申しますが、親分の前で、体裁の良いことを言っても、何にもなりません――どんなに歯軋りしても、三村屋は今日限りでございます。――親分さん、お願いでございます。この敵を取って下さい。可哀想に、小僧の竹松は、逃げ場を失って死んでしまいました」
三村屋安右衛門は、五十男の体面も忘れて、声もなく泣いておりました。歪んだ顔に嗚咽が走って、手を挙げて指さす、少しばかりの空地の隅には、筵を掛けたままの、竹松の死体が転がっているではありませんか。
火災保険――というもののない時代。地所や家作や、現金を持たぬ者は、焼け出された日から、全生活を覆されて、ドン底に顛落したのは、間々あった例です。
「まア、こっちへ来なさるがいい――話を聴いたら、敵の討ちようもあるだろう」
平次は慰めながら、打ちひしがれた安右衛門を、物蔭に呼び入れました。
「何なりと訊いて下さい。親分さん」
「第一に――」