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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
「そうかい、まだたいした働きも仕事もしたわけじゃねえ、まア、見てくれ」
万七も悪い心持はしなかったでしょう、ツイ先に立って庫裡へ入ると、調べ口の復習をするように八五郎に話してくれました。
「柳橋で大夕立に逢ったので、千両箱の釣台が寺の門を潜ったのは申刻下がり(午後四時過ぎ)、そのまま役僧の手で受け取って、住職、寄進主立会いの上、封印を切って調べるはずだったが、法要で出かけた住職も、深川から来るはずの治兵衛も、夕立に降り込められて、陽のあるうちに間に合い兼ねた。夜分千両箱を三つも置くのは物騒だし、身体の弱い治兵衛はとうとう来なかったので、庫裡へ一と晩泊めることになったが、それが悪かった」
「ヘエ――」
「夜中過ぎまでは確かにあったというが、番人がウトウトする間に、三つとも綺麗にやられた。気の付いたのは寅刻(午前四時)少し前、それから大騒動になったが、庫裡の潜戸を外からコジ開けてあったから、泥棒は外から入ったに違えねえ」
「…………」
「寝ずの番をしていた鳶頭の辰蔵が、頸を縊るといって騒いだが、それは止めた」
「寝ずの番は鳶頭一人ですか」
「寺男と小坊主が二人、時々顔を出したが、それも宵のうちだけで、子刻(十二時)過ぎは辰蔵一人になった」