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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
井崎八郎と白狗の勘次は、平次の偽手紙に釣られるとも知らず、宵闇の中を相生町から深川の方へ向いました。
行く先は、大方予想した通り木場の材木問屋、春木屋の裏口、何やら合図をすると、
「何だってこんな時分に来るんだろう。俺は、鵜の目鷹の目で見張られているんだぜ。冗談じゃない」
ブツブツ言いながら出て来た者がありました。
「時分や時節で遠慮していられるか。あれほどの大仕事をさせながら、たった一両で追っ払おうとは何事だ」
井崎八郎の声は八方構わず響き渡ります。
「たった一両? いったい何がどうしたんだ、え、井崎さん」
「白ばっくれるない、――井崎さん手紙を見せてやりましょう」
これは勘次の声です。
「お、言うまでもない」
「何、何、――これは俺の書いたものじゃないぞ、誰かにだまされてここまで来たんだろう」
「えッ」
「さア、大変ッ」
三人が身構える間もありませんでした。
「御用ッ、神妙にせい」
闇の中から不意に飛出した平次とガラッ八。
「何をッ」
手が廻ったと見るや、井崎八郎早くも一刀を引抜いて身構えました。番頭風の男と勘次の手には夜目にも閃く匕首。
「親分、三人じゃ手におえねえ。