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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens

Aozora Bunko

「そりゃア、手前がドジだからだ、文身は確かにある」

「ちょいと見せておくんなさい」

「往来で裸になれるかい、折助やがえんじゃあるまいし」

「見ておかねえと、どうも安心がならねえ、向うへ行って木戸でも衝かれると、銭形の親分ばかりじゃねえ、この八五郎の恥だ」

「余計な心配だ」

無駄を言ううちに、両国の橋詰、大弓場の裏の一郭の料理屋のうち、一番構えの大きい「種村」の入口に着きました。

「入らっしゃいまし」

「銭形の親分がお出でだよ」

「シッ」

大きい声で奥へ通すのを、平次は半分目顔で押えました。「種村」の前には世話人が四五人、怪し気な羽織などを引っ掛けて、いちいち出入りの人の身体を検べて、手形代りに文身の有無を見ておりますが、平次は顔が売れているせいか、不作法な肌を脱ぐまでもなく、そのまま木戸を通されて、奥へ案内されたのです。

川に面した広間を三つ四つ打っこ抜いて、いかにも文身自慢らしいのが、もう五六十人も集まっておりますが、平次は別段その中から人の顔を物色するでもなく、

「親分、石原のが来ていますぜ」

と袖を引くガラッ八を目で叱って、隅っこの方へ神妙に差し控えました。