Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens

Aozora Bunko

妻恋坂上のささやかな稲荷、見通しの木連格子の前、大きな賽銭箱の蔭に隠れるようになって、紅に染んだ娘が一人、浅ましくも痛ましい姿を、まざまざと三月の朝陽に照らし出されているのでした。

「寄るな寄るな、見世物じゃねえ」

町役人と番太が声を涸らして野次馬を追い散らしている中へ、平次と八五郎は飛込んだのです。

「お、銭形の」

「大根畠の兄哥か」

神田と湯島に、自然睨み合った形になっている御用聞が二人、娘の死骸を挟んで妙に改まります。

「見当は付いたのかい、大根畠の」

平次は死骸の上に眼を落しました。

「いや、何にも判らねえのさ」

金太は田螺のように、心の殻を鎖しました。

殺されたお柳は、有馬屋のお糸、棟梁吉五郎の娘お留と並んで、明神様の氏子の中に、三つ星のように光った娘だけに、碧血に浸ってこと切れた姿は、言いようもなく凄艶を極めました。

傷は背後から喉笛を右へ斬られたもので、髪も乱れず、衣紋も崩れず、蝋のような顔が仏作りで、半面に血潮を浴びたにしても、清らかにさえ見えるのです。

「刃物は?」

平次は心持あたりを見廻しました。

「これだよ」

金太はさすがに隠しもならず、懐中から手拭に包んだままの血染の小刀を出して見せます。