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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十三)青い帯
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens
旗本北条左母次郎、祖先の手柄で、三千二百石の大禄を食み、役付になれば、ずいぶん人の羨む出世もできるはずの天才的な腕が理智を虐げて、人を斬ってみたいという恐ろしい病に取りつかれたのでした。
最初は巻藁、それから、身分の者は憚った刑場の二つ胴試し、ツイ悪友に誘われて、その頃によくあった辻斬を試みてから、次第に病的な嗜好が高じて、江戸の街の闇を横行して、生身を試すことに浮身を窶すようになったのです。
妹の萩野は、兄の気違いじみた病癖を知って、命を投げ出す覚悟で諫めました。祖先の武名のため、三千二百石の家禄のため、真に必死の思いでしたが、歪んだ兄の嗜好は、妹の涙くらいでは引戻せそうもなく、次第次第に悪業が募るばかりでした。
近頃は町方御用聞が活動を始め、捕物の名人と言われる銭形平次が乗り出したことが、萩野にとっては我慢のならない恐怖でした。が、兄の左母次郎は自分の腕に信頼しきって、平次ごときは眼中にありません。
その晩もとうとう、一刀を提げて、裏口からフラリと外へ出てしまったのです。血に渇く辻斬病患者は、近頃はもう老人と女でさえなければ、どんな相手でも構わなかったのでした。