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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十三)青い帯
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens
銭形平次打明け話
二尺八寸の極めて小さい弓――
それを継弓にして、金襴の袋などに入れた、贅沢な道具を持った旦那衆が、美しく彩色を施した九寸の朴の木の矢で、七間半の距離から三寸の的を射て、その当りを競って楽しんだのです。
矢場が魔窟になったのは、天保以後から明治にかけてのこと、貞享、元禄、享保――の頃は、なかなか品格の高い遊戯で、矢取女も後の矢場女のようなものではありません。
お千勢の矢場というは、お千勢の母親のお組が采配を揮い、娘のお千勢の愛嬌を看板に、この二三年めきめきと仕上げた店でした。
「この通りだよ、銭形の」
店も奥もありません。入るとすぐ矢場で、わずかばかり敷いた畳の上に、若い女の死体は横たえてあるのです。
死骸の側に身を俯向けて、ヒタ泣きに泣き入るのは母親のお組でしょう。三人の若い矢取女は、どうしていいのか見当も付かぬらしく部屋の隅っこに額を鳩めて、脈絡もないことをヒソヒソと話している様子です。
平次は進み寄って、死骸の上に掛けてあるものを取りました。
「あッ、お千勢」
後ろから差し覗くガラッ八が、思わず頓狂な声をあげたのも無理はありません。たしなみの良い娘の死骸は、半身紅に染んで、二た眼と見られない痛々しい姿ですが、よく化粧した顔は白蝋のように蒼ずんで、なんとなく凄まじい美しさがあるのです。