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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十三)青い帯

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens

Aozora Bunko

三

「逃げた様子がないと言った方がいいかも知れませんね」

「フーム、面白そうだな。もっと詳しく話せ」

平次も膝を乗出しました。最初から通り一ぺんの押込みと思い込み、ガラッ八の手柄にさせるつもりで、御輿をあげなかった平次ですが、こうなって来るとやっぱり、岡っ引本能がジッとしてはいません。

「一方は土蔵で、一方は隣の家だ。店へ抜ける口は一つで、そこから孫三郎が飛び出したんだから、曲者は裏木戸から逃げる外に道はない。ところが、木戸は内から念入りに締っていたというし、塀には恐ろしくヤワな忍び返しが打ってあるから、うっかり触っても外れるに決っている。万屋茂兵衛は一体どこから逃出したのでしょう、親分」

ガラッ八は唾を飛ばしながら弁じました。

「俺に訊いたって判るものか、番所へ行って万屋茂兵衛に聴くがいい」

「茂兵衛だって、鳥や土竜じゃありませんよ。あの箱の中のような庭からどこをどう逃げ出したというんで? え、親分」

「俺が叱られているようだな。ところで、騒ぎになった時、その人数の中に翁屋の店の者でない顔がいなかったのかな、――孫六を殺して、土蔵の庇合いとか、井戸の後ろとか、戸袋の蔭とかに隠れて、大勢人が出たところへ、そっと紛れ込む手はあるぜ」