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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十三)青い帯
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens
七
「そう来なくちゃ面白くない」
その後ろからいそいそとついて行くガラッ八。
七
「あ」
平次は鶴亀の松の前に、棒のように突っ立ちました。
「親分、どうしたんです」
八五郎の方が驚いたのも無理はありません。
「八、あれを見たか」
「何ですえ、親分。細川様の御門と鶴亀の松、――外に何にもないじゃありませんか」
「いや、あるはずだ」
「御門の前に駕籠が一梃」
「それから」
「飛脚が飛出しましたね、お下屋敷から。九州熊本の御領地へ、急ぎの手紙でも持って行くんでしょうよ」
「そこだよ、八」
「ヘエ――」
八五郎はキョトンとしました。親分の平次の調子が、あんまり不断と違っていたのです。
「夜でも昼でも、俺達は江戸の町の中を、滅多に駆けちゃ歩けないな」
「夕立に逢った時は別ですがね」
「その通りだ。夕立にでも逢わなきゃ、江戸の町を駆けて歩くと、誰でも変だと思う。まして真夜中だ」
「ヘエ――」
「ところが、江戸の町の真ん中を、存分に駆け出しても、一向人の驚かない稼業がある」
「ヘエ――」
「駕籠屋と飛脚だよ、八」
「?」
「四つ手なら飛ぶ方が当り前だが、町駕籠だって、急ぎの用事の時はずいぶん飛ばせる。まして飛脚はノソノソ歩いた日にゃ、恰好がつかない」