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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十三)青い帯

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens

Aozora Bunko

二

誰もいません。多分その問いを予期して、その場を外したのでしょう。

「清吉、その女を締め上げてみろ」

「へエ――」

清吉の手は容赦もなくお万の襟を締めて行きます。

「言う、言いますよ――その匕首は、猪之さんのだよ。二三日前夜店の古道具屋を冷かし損ねて買って、見せびらかしに来たんだもの――忘れるものか。痛えや――親分。そんなに喉を締めたって、あとは何にも知らねエよ」

お万はペラペラとやってしまいます。

「猪之松というのはお前だな――御慈悲を願ってやる、神妙にせいッ」

万七の十手は、そこにぼんやり突っ立った、炭屋の猪之松の肩をピシリと叩きました。

「じょ、冗談じゃありません。匕首は私の品だが、お勢を殺したのは私じゃありませんよ」

抗う猪之松は、馴れた万七の手にたぐり寄せられました。

「そいつはお白洲で言うがいい、来い」

万七は容赦もなく引っ立てます。

「親分さん、それは違います。猪之さんは人なんか殺すものですか」

主人のお秀は見兼ねて飛び出しました。が、自分の手柄に陶酔した万七や清吉の耳に入るはずもありません。

「匕首が独りで背中へ突立ったわけじゃあるめえ、――この通り、障子の外から突いた様子だ」