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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十三)青い帯
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens
「無駄だ、――それより、金を」
父親の眼を追って行くと、土蔵の入口には銭箱が一つ、中から落散った小判が、夜目にも鮮やかに輝きます。
「金は大丈夫ですよ、盗られやしません。それより気を確かに持って下さい。いま誰かを呼んで来ますから」
「待ってくれ。俺はもう」
「あ、お父さん」
「…………」
「しっかりして下さい。父さん」
孫三郎は父親の命を取止めようと骨を折りましたが、その時はもう力が尽きたものか、生命の最後の痙攣が走ると、倅の腕の中にがっくりと崩折れてしまったのです。
「どうした、孫三郎どん」
「何が始まったんだ」
裏口から手代の徳松と、下女のお福と、それにつづいて主人の妹お梅とが一団になって飛び出しました。少し遅れて大勢の奉公人たち、最後に若主人の半次郎、これはひどく取乱して、寝巻の帯を結んだり解いたり、死骸の側へも寄れないほどの脅えようです。
二
八五郎のガラッ八が、鍋町の現場から駆け戻ったのは、翌る朝でした。
「親分、落着いていちゃいけませんよ。あっしが行くと、三河島のおびんずる野郎が来て、町内の万屋茂兵衛を縛って行くじゃありませんか」
「おびんずる野郎てエ奴があるか、金太親分と言え」