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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十三)青い帯

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens

Aozora Bunko

そこは大川へ突き出すように花火見物の桟敷ができていて、危ない梯子で、狭い庭へ降りられるようになっております。

「親分、その梯子は腐っていますよ」

お秀は後ろから声を掛けました。

「なアに、女一人降りられる梯子なら、俺に降りられないことはあるまい」

平次は謎のようなことを言って、危ない梯子を降りると、便所の傍の戸を押しあけて、ソロリと階下へ入った様子です。

同時に、お秀はバタバタと平次の後を追いました。物見台から同じ梯子を降りると、平次の入った戸へ入らずに、小さい庭を横切って黒板塀の潜戸を押すと、パッと外へ――

「八、気をつけろッ」

続いて八五郎が飛び出した時は、何もかも終っておりました。潜戸を脱けたお秀の身体は、夜空に弧を描いて、大川へ水音高く飛び込んでしまったのです。

「親分」

「えッ、しょうのない徳利野郎だ。少しは泳ぎでも稽古しておけ」

平次が飛び込んだ時は、夜の上げ潮はお秀の身体を呑んで捜しようもありません。

*

事件の一埒が付いてから、ガラッ八にせがまれて、平次はこう説明してやりました。

「意気とか通とかの世界に溺れきったお秀が、山から掘り出したような猪之松を見て、すっかり夢中になったのさ。