Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十三)青い帯

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens

Aozora Bunko

「へッ」

八五郎は照れ隠しに鼻を撫であげます。

平次は時を移さず飯田町の伊勢屋へ飛んで行きました。

「主人の治三郎はいるかい、俺は神田の平次だが――」

「ヘエ、私がその治三郎でございますが――」

帳場で心も空の算盤を弾いているのは、三十五六の青白い中年男。意気地のないような、そのくせ一国者らしい治三郎でした。

「お由良の死んだことは知ってるだろうな」

「ヘエ――」

それを承知の上、素知らぬ顔で算盤を弾かなければならぬ治三郎の心持は、平次にも解りません。

「それをどう思う」

「ヘエ」

「店の者のいないところで、ゆっくり話を聴きたいが――」

平次は四方に眼を光らす手代や丁稚たちの顔を見渡して、とうとうこうきり出さなければなりませんでした。

「それではどうぞこちらへ――」

奥の一と間、店の者の眼の及ばないところに行くと、平次は改めて訊きました。

「お由良は殺されたんだが心当りはないのか――打ち明けて話して貰いたいが――」

「そのことでございます、親分さん。奉公人たちの手前、私は我慢に我慢をしておりますが、朝から真っ暗な心持で、この先どうして生きていいか見当も付きません」

「…………」