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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens
、それが口惜しくて泣くんですぜ、親分」
「…………」
「女の中にも賀奈女のような、自分の容貌と才智と愛嬌に自惚れ切って、世間の男を夢中にさせ、それが嬉しくてたまらないようなのもあれば、――見っともなくて、無口で無愛嬌で、自分の亭主へ意見一つ言うことも出来ず、そのくせ仏様みたいな素直な心持で、黙って死んで行くお今のような女もあります」
「…………」
「賀奈女のために死んだ男や女は二人や三人じゃねえ。内弟子のお秋さんの許嫁だって、やっぱりその一人――」
「何? お秋の許嫁がどうした」
平次は聞きとがめました」
「そんな噂もありますよ。町内の衆だって、賀奈女の容貌と愛嬌と踊には感心しながら、腹の中じゃ化け狐だと思っている。――死んだって泣く者なんか一人もねえ、ザマア見やがれ」
「…………」
「私は賀奈女の死んだのさえこの眼で見れば、もう思いおくことはない。死んだ気になって働いて、もういちど伊勢屋の身上を立て直し、あの世の女房に見せてやりますよ。――女房はそればかり言いつづけて死にました。私はこうなっても誰も怨みはしない。お前さんさえ元のお前さんになってくれれば、ただ私たちの代になって伊勢屋を潰したとあっては、あの世へ行っても御先祖様に合せる顔はない。