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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
」
お葉は重太郎の手を取って、縁に腰を掛けさせた。
「可いよ。追手の人が来たら隠して上げるから、安心してお在。お前さん、寒かアないかい。」
お葉は座敷へ復って、徳利と洋盃とを持って来た。
「お燗が熱過ぎているかも知れないが、一杯お飲みよ。温暖になるから……。」
「こりゃア何だ。」
「お酒だよ。飲んで御覧。妾のお酌ですよ。」
重太郎はお葉の酌で、満々と注がれたる洋盃を取った。が、生れてから今日まで酒と云うものの味を知らぬ彼は、熱い酒を飲むに堪えなかった。彼は一口飲んで忽ち噎せ返った。
「熱いの。」と、お葉は微笑んだ。重太郎は顔を皺めて首肯いた。
お葉は更に起って縁先に出た。左の手には懐紙を拡げて、右の腕も露出に松の下枝を払うと、枝も撓に積った雪の塊は、綿を丸めたようにほろほろと落ちて砕けた。其の白い一片を紙に受けて、「さあ、これで温めて上げるよ。」
冷い雪はお葉の白い手から洋盃に移された。重太郎は無言で雪と酒とを一所に飲んだ。が、口に馴れぬ酒は矢はり苦いと見えて、彼は二口ばかり飲んで洋盃を置いた。
「旨くないの。これを飲むと温暖になるんだけれども……。」と、お葉は笑った、「じゃア、妾が助けて上げますよ。