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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
は曾て出逢った例がない、唯見れば尋常一様の貴婦人で、別に何の不思議もないが、扨その顔に一種の凄味を帯びていて、迚も正面から仰ぎ視るべからざる恐しい顔で、大抵の婦人小児は正気を失うこと保証だ。
扨その翌朝になると、番人夫婦が甲斐甲斐しく立働いて、朝飯の卓子にも種々の御馳走が出る、その際、昨夜の一件を噺し出そうかと、幾たびか口の端まで出かかったが、フト私の胸に泛んだのは、若や夢ではなかったかと云う一種の疑惑で、迂濶に詰らぬ事を云い出して、飛だお笑い種になるのも残念だと、其の日は何事も云わずに了ったが、何う考えても夢ではない、確に実際に見届けたに違いない、併し実際にそんな事のあろう筈がない、恐らくは夢であろう、イヤ事実に相違ないと、半信半疑に長い日を暮して、今日もまた闇き夜となった、夢か、事実か、その真偽を決するのは今夜にあると、私は宵から寝台に登ったが、眼は冴えて神経は鋭く、そよとの風にも胸が跳って迚も寝入られる筈がない、その中に段々、夜も更けて恰も午前二時、即ち昨夜とおなじ刻限になったから、汝れ妖怪変化御ざんなれ、今夜こそは其の正体を見とどけて、あわ好くば引捉えて化の皮を剥いで呉れようと、手ぐすね引いて待構えていると、神経の所為か知らぬが今夜も何だか頭の重い