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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
「いや、不可い、不可い。それは嘘だ。」
「え。嘘だ……。」
市郎も驚いて顧ると、怪しの婆は傍若無人に呵々と笑った。
「此娘を二度とここの家へ入れないと云うのは嘘だ。お前の顔に判然と書いてある。ははははは。」
「喧しい、引込んでいろ。」と、市郎は疳癪を起して呶鳴付けた。
「ははははは。怒っても駄目だ。お前の嘘は妾が知っている。お前も此の娘も相互に惚れ合っている。どうして二度と逢わずに居られるものか。ははははは。」
忌々しいとは思うけれど、婆の云うことは確に真実である。市郎も少しく怯んだが、ここで弱味を見せては落着が付かない。
「ええ、貴様の知ったことじゃアない。余計な口を出すな。彼方へ行け。」
「はは、妾はお前に云っているのじゃアない。このお葉さんに教えて与っているのだ。お前さん、意をお注けよ。幾ら何うしたって、この男と娘とは離れるんじゃアないからね。」
お葉の火の手が折角鎮まりかかった処へ、又もや斯んな狂気婆が飛込んで来て、横合から余計な藁を炙べる。重ね重ねの面倒に小悶の来た市郎は、再び大きい声で呶鳴付けた。
「喧しい、煩さい。もう彼方へ行け。」
「ははははは。