Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
「ワン!」
米友の横に振った棒を飛び退いてまた飛びついて、ワン! といったのは人間ではない、かなり大きな形をしている犬の声でしたから、米友は勃然としてはねおきました。
「ばかにしてやがら」
「ワン!」
「こん畜生」
「ワン!」
「まだ逃げやがらねえ」
「ワン!」
「殴るぞ、こん畜生」
「ワン!」
「それ!」
「ワン!」
さすがの米友も呆気に取られてしまいましたのです。今まで必死になって相手にしていたのは、こんな犬ではないはずであります。相手が犬であるくらいであったならば、米友は惜気もなく十二神将や二十八部衆の形をして見せたり、また縁台がさかさになったような形をして、半時間も大道に寝ている必要はなかったのであります。
五里霧中とは言いながら、その中にはまさに米友をして怖れしむべき敵があったればこそ、彼はさんざんの苦心をして、一人相撲や一人芝居を打って見せていたものを、その大詰に至って犬が一匹出て来て、舐めてかかろうとは、いかな米友といえども力抜けがして、呆然として起き上ったのも無理のないところでありました。
「こん畜生!」
米友は業腹になって、犬をこっぴどく打ち据えようとしました。