Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
鏡台の前を少し離れて立って、自分の姿に見惚れているお君の眼には、先の涙が乾いてその代りに、淋しい笑みが漂うていました。淋しい笑みの間には、堪え難い誇りが芽を出しているようにも見えました。
ことに鏡の前に立てかけてあった写真の面と、自分の打掛姿を見比べた時に、お君の面には物に驕るような冷たい気位を見せていました。
「奥方様はどんなに御身分の高いお方でもわたしは知らない、わたしはまたどんなに賤しい身分のものであっても、今となっては知らない。お殿様がわたし一人をほんとうに可愛がって下さるから、わたしはお殿様お一人を大切にする。わたしのような者がお殿様に可愛がられることが、わたしのために善いか悪いか、今、わたしにはそんなことは考えていられない。それでは御病中の奥方様に済むものか済まないものか、それもわたしにはわからない。わたしは本当にもうあのお殿様が恋しくて恋しくて、わたしは前からあんなにお殿様を恋しがりながら、なぜ泣いたり逃げたりしていたのだろう、ああ、それが自分ながらわからない。わたしはお部屋様になりたいから、それでお殿様が好きなのではない、わたしにはもうどうしたってあのお殿様のお側は離れられない、お殿様のおっしゃることは、どんなことでも嫌とは言えない。