Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
お銀様は、
「アッ、いや――誰か、誰か、来て――苦しッ」
「あ痛ッ」
神尾主膳が痛ッと言って、お銀様に飲ませようとした小盃を畳の上へ取落して、飛び上るように手の甲を抑えたのは、今、必死になったお銀様のために、そこをしたたかに食い破られたのであります。
「わたしは死ねない、まだここでは死ねない、幸内、幸内、誰か、誰か、誰か来て……」
お銀様は飛び起きて梯子段を転げ落ちました。
「おのれ、逃がしては」
神尾主膳は、さしおいた伯耆の安綱の刀を持って酔歩蹣跚として、逃げて行くお銀様の後を追いかけました。
梯子を転げ落ちたお銀様は、転げ落ちたのも知らず、直ぐに起き返ったことも知らず、どこをどう逃げてよいかも知らず、ただ白刃を提げて追いかける悪魔に追い迫られて、廊下を曲って突当りの部屋の障子を押し開いて逃げ込みました。
お銀様が逃げ込んだその部屋には炬燵がありました。
その炬燵には横になって、人が一人、うたた寝をしておりました。それに気のついた時に神尾主膳はもう、白刃を提げてこの部屋の入口のところまで来ていました。
「ああ、あなたは善い人か悪い人か知らない、わたしを助けて下さい、わたしはここでは死ねません」