Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
「宇津木、苦しいか」
奇異なる武士は声をひそめてこう言いますと、
「いや、別に」
と兵馬は、これも、ひそかに答えました。けれどもその返事は、苦しさを耐えている返事です。
「もう一服、飲んでみるか」
と言って奇異なる武士が、兵馬の枕許まで来て、蒲団の下を探ります。
「うーん」
と兵馬はまた苦しげに呻りました。
蒲団の下から一包の紙、それは薬と覚しいのを取り出して、奇異なる武士が兵馬の口許へ持って来ました。
「まだ熱が高いな」
片手では薬の包を持ち、片手では兵馬の額を押えました。
兵馬は寝ていながら、口を開いてその紙包から薬を飲みました。
「ソレ水」
枕許の椀を取って水を兵馬に飲ませました。兵馬は少しばかり起き直って、コクリコクリとその水を飲みました。
「気をつけて寝ておれ」
奇異なる武士は、じっと兵馬の面を見つめています。
火の気のない牢屋の中の夜のことであるから、尋常ならば、なにもかも見えないのであろうけれど、この奇異なる武士は暗い中でも、よく物が見えるようであります。
兵馬もまた相当に暗い中で物が見えるようです。暗い牢の中に居つけたために、おのずから眼がそういうふうに慣らされたものでしょう。