Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

それを、なんだ貴さまは。貴さまみたいなオシャベリな奴は見るのもいやだ。あっちへ行けっ」と、ひどいけんまくで叱られた。理窟も何もあるのではなく、父は極端なエゴで極端な感情家だった。そして、自分の暴言を理由づけるためには、自分が幼時にうけたサムライ格言をもって来て、母にも子供たちにもそれを鉄則として強いた。だから外では花柳界にもて囃される寛度の風流を示しながら、家では反対に厳父の威を保とうとするらしく努めていた。外の父と、内の父と、どっちが本質なのか、ぼくらには分るはずもなかった。

これだけは両親の談合上で仲よく始められた事にちがいないが、父や母の考えが、どこにあってやり出した事なのか、ぼくには今もよく分っていない。というのは、何不自由もない父の全盛期であったのに、家に大工が入って、表門も玄関も改造しはじめ、ぼくの家はとつぜん“みどり屋”という紺暖簾を掛けた雑貨店に変り出したのである。

近所ではみな眼を瞠って驚いたらしい。何しろ前にものべたように、赤門前一帯は閑静な住宅地で、わけて清水町一番地の角地にあったぼくの家は、家の横から門の前も、きれいな小溝が流れていて、幅一米余の小橋が架っているのである。