Japanische Klassiker mit Furigana
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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Lesen Sie 猟奇の果 (りょうきのはて) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 134.971 Zeichen · 270 Bildschirme
愛之助の目には、それらの咄嗟の出来事が、活動写真のスローモーションの様に、異様にのろのろと、しかも微細な点までもハッキリと映じた。
彼は邪魔ものがなくなったので、相手の身体を跨ぎ越して扉に近づき、その向側に震えている妻の芳江を予期しつつ、勢こめてそれを開いた。
暗くてよくは分らぬけれど、人の気色はない。
「芳江、芳江」
愛之助はしわがれた声で呶鳴った。手応えがない。
彼は部屋に踏込んで、隠れん坊の鬼の様に、隅から隅へと歩き廻った。そして、芳江のグニャグニャした身体の代りに、ポッカリと口を開いた、もう一つの出入口にぶつかった。
一方口で寝室だとばかり思込んでいたのは、飛んだ間違いで、その部屋には外に出口があったのだ。
半狂乱の愛之助は、暗闇の部屋から部屋へと、人の気色を探して、うろつき廻った。ポケットにマッチを持っていたことに気づいたのは、やっとしてからであった。彼はマッチを一本一本擦っては、もう一度家中を探して見た。二階へも上って行った。だが、どこにも妻の姿はない。
逃げたのだ。どこへ逃げたのかしら。まさか家へではなかろう。どこへ、どこへ。
そんなことを考えながら、彼はいつか又、元の部屋へ帰っていた。