Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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そうもくちゅうぎょ

艸木虫魚

薄田 泣菫

Lesen Sie 艸木虫魚 (そうもくちゅうぎょ) von 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 114.254 Zeichen · 226 Bildschirme

Aozora Bunko

」

魚屋の言葉を真実だとすると、擁剣蟹は白熱した太陽の正視を怖れているのみならず、また青白い満月の流盻をすらも嫌がっているのだ。

こんな性分の擁剣蟹にとっては、一月でもいい、月のない夜が、せめて満月の出ない夜が、どんなにか望ましいことだろう。一月でもいい、満月の出ない夜が。そんなことが果して有り得るだろうか。――いや、それはあるにはあった。天文学者の言うところによると、紀元八百六十六年の二月には、月は一度も顔を見せなかった。

月が顔を見せないことはなかったが、満月の夜は一度もなかった。こんなことは世界の開闢以来初めてで、その後も二百五十万年の間に、まず二度とはあるまいといわれているが、そんなことになったのは、前の一月中に満月の夜が二度もあり、続いて三月になってからもまた二度あったので、二月には一度も見られないことになったのだということだ。

してみると、擁剣蟹がどんなに嫌がったところで、青白い顔をした満月は、月に一度はきっと海の上を見舞うにきまっているので、明るみを好まないこの蟹は、そんな夜になると、静かな波の響にも、青ざめた光の不気味さに怯えつつ、海底の土にでもこっそり潜っている外はなかった。