Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
Lesen Sie 雪国の春 (ゆきぐにのはる) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.000 Zeichen · 266 Bildschirme
東北一帯の海の風景は、もちろんハマナスを閑却してはこれを談ずることを得ぬのであるが、いかなる法則があるのか、その産地が妙に飛び飛びで、たとえば釜石・宮古間の海沿いの路などは季節のやや終りに近く通って見たのに、この木に出逢うことはなはだ稀であって、北に進んで野田玉川のあたりの荒浜になって、初めて所々に咲き残った花の群れを見たのであった。
全体にこの木の多くある所は、里や林をやや離れた、寂寞たる砂原が多かった。風に吹きたわめられた高山の這松帯のごとく、人の足も立たぬように密生している。由利郡の海岸などでは、防風用の松林の隙間から、紅の花がちらちらと見えたこともあったが、普通は孤立して自分の枝は無意味な茨であるために、せっかく鮮明なる花の色も、傍の緑の葉と相映ずるような風情がない。その代わりには渺茫たる海の色、日の光が際限もなく、幽艶の美を助けているようである。八重の薄桃色のバラにばかりなれた目には、古代な紅色の単弁が、何よりもなつかしく感じられる。夏の北海の静かな真昼、白い長い沖の雲をこの木の傍に休んで見ているような心持が、まだわれわれに残されてある歌だ。