Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいあどうきだん

青蛙堂鬼談

岡本 綺堂

Lesen Sie 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.438 Zeichen · 238 Bildschirme

Aozora Bunko

はっと驚いて立ちすくむと、相手はすぐに呼びかけた。

「与市か。主人の妻の手を引いて、どこへゆく。」

それは主人の庄兵衛の声であった。庄兵衛はつづけて言った。

「おのれらが不義の証拠、たしかに見届けたぞ。覚悟しろ。」

「あれ、飛んでもないことを……。」と、妻はおどろいて叫んだ。

「ええ、若い下郎めと手に手を取って、闇夜をさまよいあるくのが何より証拠だ。」

もう問答のいとまもない。庄兵衛の刀は闇にひらめいたかと思うと、片手なぐりに妻の肩先から斬り下げた。

あっと叫んで逃げようとする与市も、おなじく背後から肩を斬られた。それでも彼は夢中で逃げ出すと、あたかも自分の家の前に出たので、やれ嬉しやと転げ込むと、母も兄もその血みどろの姿を見てびっくりした。与市は今夜の始末を簡単に話して、そのまま息が絶えてしまった。

あくる朝になって、庄兵衛から表向きの届けが出た。妻は中間の与市と不義を働いて、与市の実家へ身を隠そうとするところを、途中で追いとめて二人ともに成敗いたしたというのである。妻の里方ではそれを疑った。与市の母や兄はもちろん不承知であった。しかし里方としても確かに不義でないという反証を提出することは出来なかった。