Japanische Klassiker mit Furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 241.861 Zeichen · 480 Bildschirme
「ウム、小気味のよいことをぬかすやつじゃナ。生きておりたいならば、壺を渡せとわしは言うのじゃ」
痩せ細った左膳の腹が、浪を打って揺れたかと思うと、ブルルッと、寒さを感じたように身ぶるいした左膳……さっと、顔まで別人のように、すごみが走った。
金属性の甲高い、ふしぎな笑い声が、高々と秋ぞらに吸われて――。
「なんのために皆が壺をつけまわすか知らなかったが、してみると汝も、柳生の埋宝をねらう一人か。細民にほどこしをいたすなどと、口はばったいことを看板に……イヤ、壺を渡さぬと申すのではない。渡すから腕で取れといっておるのだ」
「さようか。どうせいらぬ命というなら、それもおもしろかろう」
しずかな微笑とともに、泰軒ははや歩き出して、
「いずれ、また会う。それまで、壺を離すなよ。天下の大名物こけ猿の茶壺、せいぜい大切にいたせ」
片手に持っていた竹の小弓を、ポイと河へほうりこんだ泰軒、つきものの貧乏徳利をヒョイと肩にかついで、そのまま、橋上を右往左往する人馬にのまれて見えなくなった。
あとに残った左膳は――。
もう、筵のつくろいをつづける気にもなれない。
ドサリ、小屋のそばの草に腰をおろして、考えこんだ……いままで生きて来た自分の一生、左膳のあたまに、めずらしく、こんなことが浮かぶのです。