Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
四
ほんとに、あたくしはもう、そつとこのまゝにしといてちようだいね。すこしお目にかゝるのが早すぎたわ。だから、十年か二十年先につて申しあげたのよ」
「ところが、それじや、もう遅すぎます。結局、丁度いゝ時なんて、ありつこないんですよ。それを作らなければね。しかし、僕には、僕だけでは、それは作れないんです」
二人はまた黙つて歩いた。
やがて、いつの間にか、百瀬秀人の家の前に来ていた。
「もう一度来てもいゝですか?」
と、彼は、そつと彼女の手をとろうとした。
「えゝ、でも、おんなじことよ。じや、お大事に………」
彼女は素早く身をひるがえして、すたすたともと来た道を引つ返した。
四
その日の午後、京野等志は松本発の上りで東京へ帰つた。
なにはともあれ、小萩に会えたということは無意味ではなかつたと思われた。向うには、まだ多少のこだわりがあり、不意の訪問にどうこたえていゝか迷つているところはみえたけれども、結局、こつちからあそこまで踏み込んでおけばいゝのだ、と、彼は、ひとりぎめにきめた。彼女の口に出して言つたことは、すべて一と皮むいてみなければならぬことばかりだ。なるほど、今の夫を愛してはいないとも、現在の生活は耐えがたいともいわなかつた。