Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
あの時感じた、いくぶんのやつれも、今はそれほど気にならず、却つて、野の微風に髪のほつれをなびかせて、ぐつと胸をそらせた瞬間など、まだ若々しさを十分に保ち、心にもからだにも、弾みのあることが明らかに見てとれるのである。そして、なによりも彼の眼をみはらせたのは、ふとしたはずみに、彼女が、昔よく唱つた「菩提樹」の歌を、さりげなくハーミングしはじめたことであつた。
彼はわざと、それにはなんの反応も示さず、たゞそういう彼女の、なにゆえか浮き浮きとなつた気分をこわすまいと努めた。
「あら、あたし、道を間違えちやつた。すこし遠廻りになつたけど、いゝわね。でも、変だわ、あたし……。なんのために、こうして歩いてるのか、ふつと忘れてしまつてたわ。あなたをどこへお連れするのか、それを忘れるなんて、大変だわ」
と、だしぬけに、そういう彼女は、たしかにはしやいでいる。
「えゝ、いゝですとも……どこへでも連れてつてください。その方がありがたいくらいです。さあ、これから先は一人で歩けといわれても、僕は、がつかりするだけですよ」
「あなたのおつしやることはわかるの。でも、そういうこと、おつしやつてはいけないわ。