Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とうじょうのきじゅつし

塔上の奇術師/鉄人Q

江戸川 乱歩

Lesen Sie 塔上の奇術師/鉄人Q (とうじょうのきじゅつし) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 151.766 Zeichen · 303 Bildschirme

Aozora Bunko

スミ子ちゃんが、机のそばに立っても、へんな顔をして、じろじろとながめるばかりです。

にいさんは、四十面相がやってくるというので、気がおちつかなくて、いつものやりかたを、わすれてしまったのでしょうか。

「どうして、かばん持たしてくんないの? そしていつものごほうびは?」

スミ子ちゃんが、すねたようにいいますと、にいさんはへんな顔をして、

「いつものごほうびだって?」

と聞きかえしました。ひき出しのおかしのことまで、わすれてしまったのでしょうか。

「右の三つめのひき出しよ。きょうはチョコレートがいいわ。」

スミ子ちゃんがいいますと、にいさんは、やっと思い出したように、

「ああ、そうだったね。」

といって、そのひき出しをあけ、チョコレートのつつみを一つ取りだすと、

「はい、ごほうび。」

と、手わたしてくれるのでした。

スミ子ちゃんは、

「ありがとう。」

といって、そのままにいさんの部屋を出ましたが、階段をおりると、廊下のまん中で立ちどまってしまいました。

なんだか、へんな気持ちです。わすれようとしてもわすれられない、いつものしきたりを、にいさんは、けろりとわすれていたのです。