Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme

Aozora Bunko

あれほどの人でも女に溺れると、目がなくなるものかと情けなくもなります。溺れる心はないが、今の自分もやはりお松という女に、苟且ながら引かれて来たことを思うと、そこにも情けないものがあるようです。恰もよし、この時、兵馬の空想を破るものが足許から起って来ました。

恰もよし、とは言うけれども、実際それは善かったか悪かったかは疑問であります。

兵馬の足許に現われた黒い物は、ムク犬であります。

「ムク」

兵馬は低い声でその名を呼んで頭を撫でました。ムクは尾を振って喜びました。

兵馬とムク犬との間柄の、よく熟していることは、久しい前からのことでありました。お君を理解し、お松を理解し、また米友を理解するムク犬が、いつまでも兵馬に対して敵意を持っていようはずがありません。兵馬はこの犬を見て、このさい最もよき使者の役目をつとめるのは、この犬のほかにないと喜びました。

「ムク、こっちへ来い」

兵馬は素早く歩き出しました。その旨を心得てかムク犬は、兵馬のあとを跟いて行きました。

憐れむべきムク犬は、いま不遇の地位にいるのであります。間の山以来の主人は、すでに他に愛せらるべき人を得て、以前ほどにこの犬の面倒を見てやることができません。