Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
「少しお待ち、お前に頼みたいことがあるから」
「はい……」
お松にとっては、いよいよ悪い機会でありましたから、その返事もいつものように歯切れよくはゆきませんでした。それでもと言って、出かけて行く口実にも窮してしまいました。
「まあ、こっちへおいで、わたしのところへおいでなさい」
お絹はわざと、お松に猶予と口実を与えないかのように見えました。そうして退引させずにお松を自分の居間へ連れて来てしまいました。お松はどうすることもできませんから、そこへ畏まって早くお師匠様が用事を言いつけて下さるようにと、腹の中でそれを焦き立てていましたけれど、なぜかお師匠様なる人は、いつもより悠長に構え込んでいるもののようであります。
「あの、御用向きは何でございましょう」
お松は堪り兼ねて催促してみました。その時に、お師匠様なる人はようやく、
「お前、あのお長屋へ行くというのは嘘だろう」
と微笑しながら、お松の面に疑いの眼を向けました。
「いいえ」
お松は見られて煙たいような心持です。
「お長屋へあの乳呑子を見に行くと言っておいて、お前は時々、駒井様のお邸へ遊びに行くそうな」
「左様なことはござりませぬ」