Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
お松は心には充分の警戒をして、万一の時は身を殺してもと思っているのですけれども、その警戒の相手が不意になくなってみると、なんとなく拍子抜けのようでもありました。いく時たっても、がんりきは帰って来ませんでした。ついに夕飯の時になって見ると、その食膳は一人前であります。
これを以て見れば宿でもまた、自分に連れのあることは認めていないものと見なければなりません。またお連れ様はとも尋ねてみないことを以て見れば、この宿では全然、自分に連れのあったことをさえ想像していないらしくあります。
お松は合点のゆかないことに思いながらも、食事を済ましてしまいました。
日が暮れても、風呂が済んでも、いよいよ寝る時刻になっても、とうとうがんりきは姿を見せないのであります。
お松はそれを合点がゆかないことに思ったけれども、また多少安心をする気にもなりました。なぜならば、あんな気味の悪い男に導かれて行くことの不安心は、慣れぬ一人旅をして歩く不安心よりも、一層不安心であるからです。
前途はとにかく、あの男と離れたことが、かえって幸いであったと、寝床に就いた時分にホッと息をつきました。