Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

そして月末には、電灯が切られる。水道も止められる、といったような状態にまで来たが、ぼくの毎日にはいささかの禍福もなく変化もなかった。およそ尾上町の一年半ほど、ぼく自身にとって自身の好きな事がやれていた時期は前後にない。薄暗い帳場格子の中は、借金取にたいして録音されたような断りを云うほか、まったくぼくの小書斎となっていた。

そこで、ぼくは初めて小説を書いたことがある。高島米峰氏主宰の「学生文壇」が創刊され、その二号に投じた小説が当選した。題はいま考えると、ひどく古風なもので、“浮寝鳥”というのであった。三、四十枚の物であったと思う。だが投稿規定に二十四字詰原稿紙何枚とあるのを見、その原稿紙を探してあるいたが、当時まだ横浜中にも原稿紙なる物を売っている店はなかった。やむなく二十四字詰二十行に自分で罫を引いてそれに墨筆で書いたのを覚えている。

その頃、もう一つ非常な興味にふれた事がある。店の広告用原画の版木を、頼みつけの版木屋へ取りに行くついでに、新聞小説の挿絵が、どんな工程で出来るものかを、そこの木版師の仕事場で見たことだった。

ぼくのよく覗いた真砂町の彫繁という家では、横浜貿易新報や毎朝新聞の仕事もしており、小川芋銭のコマ絵だの、連載小説の挿絵などを、いつも数名の木版師が手分けで彫っていた。