Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

そして漸く、探し当てはしたけれど、もう夜も十二時近い頃だったかと覚えている。

伯父はひどく吃驚したらしい。

「え。おいくさんの息子だって。あの英さんという子か」

という声が、玄関にまぢかい奥の一室でしていた。しかし、「お上がり」とも云われない儘、ぼくは古風な式台造りの片隅に腰かけて小さくなっていた。長い間待たせられた。その間に文金の高島田に結った令嬢風のひとがお茶とお菓子を供してかくれた。ぼくには、従妹にあたる園子と呼ぶ女性とは分っていたけれど、何のことばも交わせなかった。

ほどなく伯父はむずかしい顔して玄関に姿を見せた。鳥羽藩の士族出で、攻玉舎の英語教官から宮様の進講係となって、現在、従五位の学習院教授という明治の英文学者である。神経質な細面に金ぶちの眼鏡をかけていた。その眼鏡ごしの視線に、ぼくはもう後悔にせぐられていた。到底、自分の望みなどを訴えても、理解されるはずのない別世間にいる親戚先などへ、わざわざ恥かしい思いをしに来るんではなかったにと、未熟な分別も湧いて、居たたまれなくなり出していた。

けれど伯父の方は、時ならぬ深夜だし、何事かと驚いたにちがいない。