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Japanische Klassiker mit Furigana

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たんていやわ

探偵夜話

岡本 綺堂

Lesen Sie 探偵夜話 (たんていやわ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 140.363 Zeichen · 277 Bildschirme

Aozora Bunko

耳は多少きこえるらしいが、口は自由にまわらない。ただ時々に野獣のような牙をむき出して、「ああ。」とか「うむ。」とか奇怪な叫び声をあげるに過ぎなかった。しかし容貌は醜くない。かれは死んだ母に似て、細く優しげな眼と紅いくちびるとを持っていた。

かれが幼いときの経歴は倉部巡査も直接には知らない。しかし村の者の伝えるところによると、不具の少年の過去はいたましい暗い影に掩われていた。かれの父の相原健吉はもう五十近い人品の好い男で、近所の或る藩の士族の子息だというので土地の者にも尊敬されているばかりか、ここらの村医としては比較的にすぐれた技倆を持っているので、近村の者にも相当の信用をうけて、わざわざ遠方から彼の診察を乞いに来るものもあった。もちろん、村の医師であるから、玄関が繁昌する割合に大きな収入もなかったが、死んだ妻がなかなか経済家であった為に遠い以前から相当の財産を作って、商売の傍らには小金を貸しているという噂もあった。それは別に彼の信用を傷つけるほどの問題でもなかったが、その以外にかれの過去に暗い影を残したのは、その妻が横死を遂げたことであった。

なんでも独り息子の与助が二歳の秋の出来事であったと伝えられている。