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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

Lesen Sie 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 337.181 Zeichen · 676 Bildschirme

Aozora Bunko

だが、その良人は、まだ帰らない。

帰ってもこの頃は、食事も勤めのように箸を取るだけであるし、ゆうべも、眠った様子はない。

(女の関わった事ではない)

訊ねたら、すぐそう云って叱られるであろう。蒼白い良人の顔には、いつとはなく、眉に針が立っている。

女性のもつ真情と、細かな気くばりをもって、身のまわりの事や、心の慰めになろうと努めてはいるが、眉の針は、朝も消えていない。夜も消えていない。

『どうぞ、七日の大命、良人の身、無事に、勤め了えますように……』

神には、御明灯を、仏には香を、ただ一心に念じているより他にない女であり、一室の悩みであった。

『殿さま! お退城りでござります』

夫人の気持を知っている侍女の末までが、御表の物音を聞くと、常には、静かな足も走って、つい、声までが癇走って欣びを告げるのだった。

『はい……』

途端に、彼女の胸は雪解のように、がっかりする。喜び立って、良人の無事な姿に泣き濡れたい気持もする。

だが、静かであった。裲襠のすそを音もなく曳いて、鏡のまえに一度坐る。髪の毛、一すじの乱れも、良人を暗くするであろう。臙脂も、褪せていてはならぬ。